新・古事記

2024-01-20 10:47:00

#3日本語バージョン

天野文が目を開けるとそこは牢獄だった。

「は!ここはどこ?痛い!」

体が動かない。

「ん!!!」

ベットに縛り付けられている。

入口の方を見ると人が通りかかった。

「あの」

小さく呟く。

白衣を着て小さな帽子をかぶっている。

「ここは。。。」

「ここは病院です。あなたは警察と救急車でここまで運ばれました」

「お名前は天野文さんですよね?」

「はい」

周りを見回す。どう見たって牢獄だ。

「ここ警察ですよね?」

「私捕まったんですか?」

「いいえ」

白衣の女性はふとため息をつくときりっとした顔になりこう言った。

「ここはぼ病院です。あなたは逮捕されたわけではありません。措置入院と言って県知事の指示で入院しています」

 

「凛空!!!」

 

頭が真っ白になり子供の名前だけ浮かんだ。

「凛空は!!!凛空は!!!」

「お子さんは無事です。今、児童相談所に預けられています。けがもなく無事ですよ!」

看護師らしき人物はそう言った。

外は大雨が降り雷がしきりに鳴っている。

「ここはどう見ても監獄、体も縛られているし、凛空も無事なわけない」

凛空のことを考えるとどうしても頭が回らない。

その時、ひときわ大きな雷が鳴り、壁を照らした。

「誰か。。。いる」

壁に誰かいるようだ。

こちらからは逆光になって見えないが、それでもものすごく美しい女性なのはわかる。

女性は末斜めの姿勢になると文に話しかけてきた。

「子供は無事です。御安心なさい」

なんとなくなく信じれる気がする。逆光で陰になっているのに女性は神々しく光って見えた。

「凛空は。。。無事、なの?」

女性の言葉は信じるに足るように感じる。

「あなたは選ばれました」

女性はそう続けた。

「選ばれた?何に?」

言葉にしようとするのだが、女性に話しかけられない。目線をやるのもおこがましい美しさだ。

女性の背後からは後光の光が差し、こちらからはその顔を見ることができない。

いや視線を向けることさえ恐れ多いと思われた。

やがてその女性の影は薄さを増し、だんだん見えなくなってきた。

「あ、あの」

恐れ多くて声が出ない。

「あの」

最後の勇気を振り絞って声を出した。

「あなたは選ばれたのです」

最後に女性はそういうと後光の光と共に消えていった。

文は再び気を失った。